「世界一幸せな国」「ムーミン」「おしゃれな北欧デザイン」。
フィンランドと聞くと、そんなキラキラした洗練されたイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。
金髪碧眼の美しい人々が暮らす、憧れの国。
しかし、実はフィンランド人には**「かつて欧米諸国から『白人ではない』『アジア系だ』として差別されていた」**という、意外で悲しい歴史があることをご存知でしょうか?
ネット上でたまに見かける「フィンランド人と日本人は顔が似てる」という噂。
実はこれ、単なる空似ではなく、歴史的な「痛み」が関係している話でもあったのです。
今回は、なぜ彼らは「モンゴロイド」と呼ばれたのか?そして日本人が彼らに親近感を抱く本当の理由について掘り下げてみます。
フィンランド人は金髪碧眼なのに「モンゴロイド」?
日本人と顔が似ているという点について
一般的にフィンランド人といえば、透き通るような青い目とブロンドヘアをイメージしますよね。実際、彼らの多くは典型的な北欧のルックスをしています。
しかし、よく観察してみると、お隣のスウェーデン人やノルウェー人(ゲルマン系)とは少し違う特徴を持つ人々がいることに気づきます。
• 頬骨が少し高めで張っている
• 目が少し細め、あるいは奥二重っぽい
• 顔の凹凸が少なく、平たい印象
これらは、私たち日本人(モンゴロイド)にも共通する特徴です。
さらに驚くべきことに、フィンランド人の赤ちゃんには、日本人の赤ちゃんと同じ**「蒙古斑(もうこはん)」**が出ることがあるそうです。これは西欧の他の国ではまず見られない特徴です。
「やっぱり日本人の親戚なの!?」と思ってしまいますが、現代のDNA研究では、フィンランド人は遺伝的にはヨーロッパ系がベースであることがわかっています。
ただ、はるか昔、ウラル山脈周辺から移動してきた歴史の中で、シベリアやアジア系の遺伝子がわずかに混ざり合った名残だと言われています。
隣国から差別された「悲しい歴史」の正体
では、なぜ「差別」という重い話が出てくるのでしょうか。
それは19世紀から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパで流行した**「骨相学(こっそうがく)」や「優生学」**という、今では否定されている学問が関係しています。
当時、スウェーデンやドイツの学者たちは、「自分たち(ゲルマン民族・アーリア人)こそが最も優れた人種である」と証明しようと必死でした。
そこで、言語もルーツも異なる隣国のフィンランド人を、比較対象としてこう定義したのです。
「フィンランド人は、アジアから来たモンゴロイド(黄色人種)の血を引く、短頭の劣った人種である」
なんともひどい話ですが、当時はこれが「科学」としてまかり通っていました。
実際に、フィンランド人の頭の形を測ったり、墓地を掘り起こして頭蓋骨を持ち去ったりといった調査が行われ、「彼らは白人ではない(=文明度が低い)」というレッテルを貼られたのです。
フィンランドが長らくスウェーデンやロシアの支配下にあった背景には、こうした「人種的な偏見」も少なからず影響していたと言われています。
日本人がフィンランドに親近感を抱く「本当の理由」
「モンゴロイド扱いされて差別された」なんて聞くと、同じアジア人として少し複雑な気持ちになりますよね。
ですが、この「欧州の中での孤独」こそが、今のフィンランド人と私たち日本人を引き合わせる鍵になっているのかもしれません。
フィンランド人と日本人が似ているのは、実は顔立ち以上に**「国民性(性格)」**だと言われています。
• 沈黙を恐れない(会話の間に沈黙があっても気まずくならない)
• 極度のシャイで人見知り
• パーソナルスペースが広い(バス停で等間隔に並ぶ写真は有名ですね)
• 家の中では靴を脱ぐ
フィンランド語は「ウラル語族」に属し、英語やドイツ語などの「インド・ヨーロッパ語族」とは文法構造が全く異なります。
ヨーロッパの中で「言葉が通じない」「ルーツが違う」という疎外感を感じてきた彼らと、島国で独自文化を育んできた私たち。
外見が似ているかどうか以上に、「周りとはちょっと違う」という歴史的な立ち位置や、控えめなメンタリティが、お互いに「なんだか落ち着く」と感じさせる最大の理由なのかもしれません。
まとめ:遠くて近い、不思議な国
「フィンランド人はモンゴロイドである」というのは、かつて彼らを差別するために使われた間違ったレッテルの歴史でした。
しかし、その歴史を知った上で今のフィンランドを見ると、単なる「おしゃれな北欧の国」以上の深みが見えてきませんか?
遠い北の国で、かつて「アジアっぽい」と言われ苦労した人たちが、今は「世界一幸せな国」を作っている。
そして、その彼らがなぜか日本人に強い親近感を抱いてくれている。
そう思うと、サウナやムーミンが、これまで以上に愛おしく感じられるような気がします。


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